【講演レポート】クラウド時代の業務改革で情シス部門の信頼を取り戻す機会を!三井化学・松田正太郎氏がkintoneについて語る‼

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こんにちは。九州は福岡よりセミナーのレポートです。
2016年6月1日(水)、2日(木)、福岡市の福岡国際会議場において日経BP社主催『ITpro EXPO 2016 in 九州』が開催されました!

曇り空から一転、晴天となった1日の午後。同イベントのKEYNOTE特別企画『事業に貢献するために情報システムが気をつけること~ハイスピード業務改革の勘どころ』というテーマで、kintone(キントーン)ユーザー様でもある三井化学・松田正太郎氏によるセミナーが行われました。

今回は、kintoneを用いた事例をベースに「クラウド時代の業務改革」について語られたそのときの模様をお伝えします。

三井化学にとって九州は発祥の地

松田(敬称略) みなさん、こんにちは。三井化学の松田と申します。"クラウド時代の"ハイスピード業務改革の勘どころといった感じで話を進めていきたいと思います。最初に、三井化学という会社の紹介をさせてください。

三井化学は、ヘルスケア、モビリティ、フード&パッケージング、基盤素材という4つの切り口で化学素材を作って世の中に提供している会社で、今回の会場、九州・福岡にも大牟田工場と福岡支店があり、同社は、明治時代に大牟田の地で三井鉱山が創業したのがはじまり。九州は発祥の地なんだそうです。

大牟田工場では、車のシートのウレタンクッション、メガネレンズ、栄養ドリンクに入っているタウリンなどを製造しているとのことです。

松田氏は、三井化学と出光興産のジョイントベンチャーであるプライムポリマーを経て、現在は、三井化学 システム部 事業支援グループに在籍されています。

松田 ここでちょっと質問ですけど、みなさんのなかに企業の情シス部門、または、部門はないけれども、何かシステムを作って業務部門の方に提供されているようなお仕事をされている方ってどれぐらい、いますか?

手が挙がったのは、会場全体の3割くらいのようでした。
この質問をきっかけに本題へと入っていきます。

情報システムが生み出す価値が変わってきた

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松田氏は、企業の情報システムが生み出す価値、システムを使って企業活動のなかでどの部分に価値を生み出していくのかが変わってきているとずっと感じていたそうです。

以前は、決められた業務を効率よくやれば業績があがる世の中で、基幹システムなどによる業務の標準化、自動化で価値を生み出していた。現在求められる価値は、業務の生産性向上に加え、組織や課題の変化に柔軟に対応していくこと、そしてICTによるマーケティング、新製品開発のスピードアップ、新ビジネスモデルの創出へと変わってきたと指摘します。

また、業務効率化の役割を担ってきたのはエクセルで、その結果、多くのエクセル職人が養成された。組織や課題の変化に対応するのも会社のシステムではなくエクセルで作成した、さまざまな業務システムと呼べるものがカバーしてきたといいます。

しかし、業務のために導入したエクセルが人に属する、つまり、属人化すると、それが業務のボトルネックになると警鐘を鳴らします。属人化エクセルは関係した人にしかわからず、業務の引継ぎも上手くいかないというのです。

これまでのウォーターフォール型のシステム開発に疑問

要件定義にしっかりと取り組み、長い時間をかけるウォーターフォール型と呼ばれるシステムの作り方に松田氏は疑問を感じていたそうです。

要件定義から設計、開発、テストまで平均9カ月かかるなど、期間が長くなると人件費もかかり、お金も高くなる。しかし、開発していくうちに環境や課題も変わる。

"ビジネスの求めているスピード感にシステム開発がついてこれない"
という現状があると指摘します。

80:20 この数字は情シスにとっては危機的数字

松田 サイボウズのkintoneは、契約している部門がIT部門ではなく業務部門が多いそうです... 
80:20の80が業務部門の契約です。何が起こっているのか? 
「IT部門の中抜き」が起こりはじめていると思います。

現場は従来のシステム開発にマイナスの印象を持っていて、松田氏は情シスとして危機を感じているといいます。

そこにクラウドサービスが出てきて、これらを上手く活用することで、現場の業務改革スピードを速くして、お金をかけずに使えるものを開発できるのでは... という思いで活動を続けてきたといいます。

そんな松田氏が、これより「クラウド時代のハイスピード業務改革の勘どころ」を7つ、kintoneを用いた事例を中心に説明していきます。

クラウド時代のハイスピード業務改革の勘どころ7つ

1.従来業務をシステムで固定化するのはNG。ICT化で業務を見直す

従来業務はIT化のタイミングで見直しが必要です。
要件定義の際に現場の担当者はシステムのできあがりがイメージできていないのが現実。
イメージできていないため守りの思考になり、現状業務と同じもしくは過大なシステムを作ろうとする傾向がみられると指摘します。

それを解消したのが"kintoneによる超高速対面開発"だったといいます。

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この例は、出張中に上海営業拠点の関係者を集め、一緒に画面を見て意見を出し合いながらシステムをその場で作り上げたそうです。
その所要時間は2時間程度だったといいます。

松田 こういう開発をすると、現場の人たちからは、おぉ! とか、感動の声みたいなものが聞こえてきて、こちらもちょっとうれしくなる。
こういうことができるのがクラウド!

2.属人化したExcel業務は業務改善の盲点

弊害があるのに、エクセルの属人化は組織の課題になりにくい。
属人化した業務は職場の上司も内容をなかなか把握できないことや、担当者が少数の場合、システム化する投資対効果が得られないからだと指摘します。

属人化エクセルで行ってきたジョイントベンチャー企業の社員管理業務をkintoneで構築したそうです。この業務の担当者は1人なので、わずか1カ月1,500円で社員管理システムを作成できるといいます。

松田 通常だとお金をかけられないようなところでも、クラウドを使うと業務システム化が簡単にできます。

3.クラウドサービスの緩やかな連携がキモ

クラウドサービスは、APIを使って連携ができるものが増えています。
これらを連携させ、各サービスのおいしいところを組み合わせて活用できる、そういうメリットがあると強調します。

たとえば、Sansan(サンサン)を使うと、セミナーや展示会で手に入れた大量の名刺もすぐにデータ化することが可能です。
そして社内の人脈を共有化して活用することができます。
そのデータはkintoneやList Finder(リストファインダー)と連携可能で、マーケティング活動管理やWebマーケティングにも簡単に活用できるそうです。

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4.フロー型・ストック型の業務プロセスでシステムを使い分ける

仕事の流れは、大きく2種類に分けられるといいます。
〇〇依頼や〇〇申請などのように、複数部門にまたがって仕事が流れ、それを円滑に回すことが業務改善につながるフロー型。
そして、〇〇管理台帳や報告書などのように情報を蓄積し、その情報を共有して次の業務に活用することに価値があるストック型です。

kintoneはストック型に向いたシステム

フロー型に向いたクラウドサービスの例として、業務プロセスの構築、改善が得意な"Questetra BPM Suite"があります。そして、ストック型に向くのはデータベース連携が得意な"kintone"だと松田氏はいいます。

また、ここでQuestetra(クエステトラ)を導入した事例を紹介し、従来から問題のあった業務プロセスをシステム化することで、現状プロセスの問題点を見える化し、サイクルを回しながら改善をしていったといいます。Questetraもまたkintoneと連携可能だといいます。

Questetraとkintone連携:https://www.questetra.com/ja/info/kintone-api-20160523/

5.ユーザーは答えを教えてくれない

業務改革は、既存の業務をそのまま自動化するのではない。今まだないものを作ろうとするため、ユーザーに聞いても的確に答えてくれる人はなかなかいないと語ります。

松田 ヒヤリング内容にとらわれずに、ある程度、こちら側が想像力をもって新しい業務を一緒に作っていくみたいな感じの取り組みが必要なんです。
こういうことをやるときにクラウドシステムは非常に相性が良いです。

6.やる前に「失敗しないように」を考え過ぎない

"クラウドサービスを使った業務改革は、失敗コストが驚くほど小さい"
特に歴史のある会社の多くは、組織の意思決定において「失敗しないように」という考えが定着している。ところが、クラウドを使えば、失敗しても損失は小さく「失敗したらやめれば良い」が通用するといいます。
業務を変えていくためにチャレンジングな意思決定ができるというのです。

7.初めから100点満点を目指さない

従来のシステム開発は、初めから100点満点を目指すもの。ゆえにスピードとコストが犠牲になっていると指摘します。
超高速開発が可能なクラウドによる業務改革においては70点ぐらいを目指し、まずは使ってみて改善していく、高速スパイラルアップ型の取り組みが非常に適していると語ります。

松田 こういうやり方をしていると、実は最近こんな課題が出てきたんだけど、みたいなことに柔軟に対応することができるんです。
クラウド時代のハイスピード業務改革というのは"情シス部門の信頼を取り戻すチャンス"だと僕は思っています。

ここまで説明してこられた7つの勘どころ、業務改革の進め方と意思決定の話で、特に大きい会社になればなるほど、変わるのに時間がかかると思います。と松田氏は付言します。

業務システムは職場の文化を作る

松田 業務システムというのは、ずっと使われていくと職場の文化になると思うんです。
業務改革の本質は何か? システムを作ることで新しい文化を作って、人の考え方や行動を変えていく。そのなかで、システムを上手く使い、その上にコミュニケーションやチームワークが乗っかる。
それがこれからの業務改革の在り方ではないのかなと思います。
以上になります。どうもありがとうございました。

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セミナーを終えた松田氏

約40分のセミナーは、大きな拍手とともに終了しました。この日、情報システムは、人が作り、人が動かしている!と再認識された方も多かったのではないでしょうか。

クラウド時代の業務改革には、思ったものが低コスト・超速で実現できる『kintone』をぜひ、武器として情報システム部門のみなさまにも使っていただきたいなと思います^^

(文・写真:石盛丈博、編集:鈴木)